全日本選手権

 1年の中でも特別な、ロードレーサーのロードレーサーによるロードレーサーのための日本一を決めるレース。全日本選手権。

実力のいるレースで規定の結果を残した選手のみが出場権を獲得できる、まさに日本のレースの頂点。

去年まで大学生だった僕は、初のエリートカテゴリーでの出走となった

概要

6月26日、普段はBBQを楽しむファミリーで賑わう広島森林公園が、この日は自転車乗りで溢れかえる。

1周12kmのロードコースを15周。184.5kmで争われる男子エリート。

このレースで優勝すると、1年間日の丸をあしらったジャージを着用する権利を獲得できるということで、各チーム、各選手が血眼になって獲りに来る。それだけにレベルの高いレース。

国内トッププロはもちろん、本場ヨーロッパの第一線で活躍する新城幸也選手や、同じくトップチームのディベロップメントチームなども参加する。

もちろん、こういった選手に正面から立ち向かっても軽くあしらわれてしまう。それだけにチームでの動きが非常に重要になるレースだ。

作戦

 前日に行われたU23のレースでは、チームメイトで大学生の仮屋が優勝。見事日の丸ジャージを獲得した。チームとしてもい流れでエリートレースを迎えられることができた。

仮屋ゴールシーン
日の丸を纏う仮屋

 

 とにかく人数を減らし、数的有利な状態に持ち込むこと。それがKINAN RACING TEAMの狙いだ。

ゲンキさん、まさきさん、雄大さん、そして畑中さんと全体的に力のある選手が多いキナンは、人数が多ければ残った選手をうまく捌くことができる。さらに脚質も違うことから、局面で様々な展開に対応できる。

主導権を握り、有利に展開を運ぶため比較的早い段階から動こうと、各選手の足を削るため、6・7・8周目での三段坂でのペースアップを画策。そしてペースアップ要因として自分が任された。

2回死ぬ気でペースを上げて、3回目で死ぬ。簡単で単純な仕事だ。

展開

梅雨が明けたこともあり、この日の最高気温は30℃を超える猛暑日。スタート時点で既に暑さを感じていた選手が多かったと思う。

一方自分は、最近スーパー銭湯の「熊野の郷」でお風呂10 分×3をやっていることから、去年に比べて格段に暑さに強くなっており、あまり暑さを感じていなかった。しかし、暑熱順応したことについて、雪国・避暑地長野県出身者として何か心に引っ掛かりがあるのも事実だ。

ちなみに熊野の郷には14〜16:00 くらいに出没するので、それくらいにくればガチってるお兄さんに会えます。(男湯限定)

日がピークに昇ろうと、今か今かと待ち構えている11:00。レーススタートの号砲が轟いた。

前でスタートしたことにより、位置取りも難なくできた。

今季限りで引退を発表しており、最後の全日本となるチームメイトの中嶋さんが先頭でペースを作ってくれる。途中逃げを狙うアタックが何度かあったものの、全体の思惑が合致せず、逃げができないままレースは進んだ。

先頭でペースを作りながらアタックを捌く中嶋さん

自分は上りだけそこそこのペースで引き、あとはゲンキさんを守るためそばにいるという形で展開した。

2周目からチーム右京が、かなりハイペースでペースをコントロールし始める。ペースが上がることにはうちとしても歓迎なので、そのまま流れに乗る。

コントロールするチーム右京の後に位置取る

そのまま2周ほど進み、4周目のホームストレート。本命新城幸也選手がペースアップ。機会を伺っていた選手はこれに便乗してそのまま踏み始め、集団が分断された。

自分もゲンキさんに指示を仰ぎ、「踏め」とのことだったので、ローテに加わりペースを上げた。

最終的に集団は一つとなったが、この動きで消耗した選手も多かっただろう。

その後は集団はシャフルされたが、主にキナン、ブリッツェン などが集団をコントロール。自分は花田さんと集団を牽引しながら静かに時を待つ。

攻撃開始

カウントダウンが近づくにつれ、心拍は上がっていくものだ。

勝負の6周目、残り9周の周回板を確認する。ここまでの展開はほぼ完璧。後は自分がどれだけ絞れるか。やってやる。

花田さんに下りを牽引してもらい、平坦区間をペースで踏み、1つ目のトンネルを超え、傾斜がついたらヌメ〜〜っとペースアップ。パワー的には2分走の出力を超えており、このまま行ったら溶けちゃう状態。それでも死ぬ気でピークを目指す。

湖から三段坂のピークで多くの応援をいただき、なんとか下り切りまで踏むことができた。1回目はとりあえず成功。死にそう!!雄大さんから「よかった」と褒めてもらえた。素直に嬉しかった。

集団を引き連れて踏む

ホームストレートで補給をとって2回目に備える。

登り前のくだり切って平坦はブリッツェン アベタカさんが引いてくださり、いくらか余裕を持って登り口までいけた。

2回目の攻撃。

1回目より若干突っ込んだ。そのせいで結構きつい。

たくさんの応援を受け、最後の1段を登る

湖で対岸を見ると、かなり集団が引き延ばされていた。作戦通り行っていると思いながら、最後の坂を死に物狂いで登る。

オーダー的にはくだりきりまで引く予定が、流石に厳しくピークで花田さんに交代。少し千切れて休みつつ、下りで追いついた。

次でラスト。

トンネルから全力で踏んだ

後からチームメイトの声援を浴び、横からは観客の声援を浴び、力の限り踏んだ。

本当は三段坂の最後まで踏み切りたかったが、限界がきて最後の1段は花田さんに任せた。

役目を終え、後でくたびれている

僕の全日本が終わった。

多くの観客が僕の名前を読んでくれた。暑いな。目に汗が入って。。

足切り

完璧な状態で、思い描いた通りの展開に持っていけた。後はチームメイトを信じるのみ。

仕事を終えた安堵感と、完璧だったこれまでの展開から今後の展開に期待を抱きながら、足切りを待った。

半周走ったくだり区間で後から追いついてきたアヴニール小山さん、イナーメ松井さん、VC福岡向川さんと合流。

みんな僕のペースアップにやられたと。あ、ちゃんと意味あったんだ。嬉しい。

ちぎれてからもたくさんの名前を呼ぶ声をいただき、とても嬉しかった。

Photo by 高杉さん

1周走った時点での集団とのタイム差は2分30秒。大体5分で足切りだと勝手に思っていたので、次でラストだ。と、声援に答えながら、感謝しながら走った。

ホームストレートに帰ってきて、タイム差5分弱。アヴニール代表おっぺいさんに最後もがけ!!!と言われ、ゴールテープまでスプリント。

なぜか補給員の仮屋がボトルを掲げてた。

ボトルも喉もカラカラだった。

終わった。

と思ったら、「小出がんばれ」と、もう一周行けとの審判の方。

え、いつまで続くの?この生き地獄。

大阪万博 コロシテ くん

喉が、、カラカラです、、、、

なんというか、このレースで一番きつい1周だった・・・。

生命線として持っていた最後のATHLETUNE をぶちこんで、気合で走る。ちなみに自分はオレンジ味がお気に入り。カフェインは苦手なので、ノンカフェインモデルを選択。カフェインモデルもあるよ!!

帰ってきて、一応仮屋からボトルをもらうも、今度こそ終了。-3Lap.ありがとうございました。

終盤

ピットに帰り、ダウンがてらレースを見に行く。

残り2周。

かなり厳しいレースになったのだろう。15名程に絞られた集団にキナンは4人。(ゲンキさん、まさきさん、雄大さん、畑中さん)が残っていた。圧倒的有利。思い描いていた通りの展開で、胸が熱くなった。

次は思ったより早くきた。

残り1周のホームストレート。まさきさんが単独先行、その40秒程後を新城幸也さんと雄大さんが2人で追っている。と言ってもまさきさんが逃げているので雄大さんは付き位置。実質幸也さん1人で追っている状況。

打鐘がなる

そしてまさきさんから1分30秒ほど後を畑中さん含むメイン集団が走っている。どうなっても勝負できる、キナンとして理想の展開。激アツ。

まさきさんと幸也さんとのタイムギャップもかなりあったため、独走勝利かと思ったが、三段坂手前でなんと追いつき、そのままマサキさんをパスしたようだ。

チェックに入っていた雄大さんはそのまま食らいつき、勝負は2人のスプリントに持ち込まれた。

ホームストレートで幸也さんを先頭に牽制状態。

先に仕掛けたのは雄大さん。

そのまま伸びる。

ピットにいた全員が固唾を飲んだ。

チームとしてはほぼ作戦通り、思い描いていた通りの展開。正に完璧だった

ただ、やはり本場のプロはレベルが違った。

チームで完璧に機能していた僕らにとって、単騎で、力でねじ伏せるのは相当なことだと思う。

ただただ脱帽だ。

しかし、2位3位表彰台獲得と、チームとしてはかなり良い結果だったと思う。先輩方は本当に強いし、カッコ良かった。

まとめ

初めて重要な仕事を任され、チームとして思い通りの展開ができ、悔しい気持ちもあるがとても嬉しかった。

また、皆様の応援のおかげで本当に頑張れました。

コロナでご無沙汰だったあの賑わいを久しぶりに感じられ、本当に嬉しかった。

またこういったレースができるよう、一休みして頑張りたい。

サポート、応援ありがとうございました!!

とりあえず爆食!!!

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